労災保険制度の見直しに関する論点整理が行われました
12月18日、第126回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会が開催され、労災保険制度の見直しに関する論点整理が行われました。
次の項目に関する整理が行われています。
●適用関係
●給付関係
●徴収関係
それぞれ次のような内容となっています。
【適用関係】
●暫定任意適用事業について
→ 廃止し、労災保険法を順次、強制適用することが適当
→ 強制適用にあたっては、施行までに十分な期間を設けることが適当
●特別加入制度について
→ 特別加入団体の保険関係の承認や消滅の要件を法令上に明記することが適当
→ 承認要件の内容は、災害防止に関わる役割や実施すべき措置事項その他当該団体の業務の適切な運営に資する事項(団体等の性格、事務処理体制、財政基盤に関する事項等)とすることが適当
→ 保険関係の消滅にあたっては、特別加入者の不利益を軽減するための工夫を行うことが適当
→ 労働基準法が適用されておらず、現在、労災保険法の特別加入対象でない事業等について、特別加入の対象を拡大し、労災保険法を適用することについて随時検討することが適当
【給付関係】
●家事使用人について
→ 労働基準法が家事使用人に適用されることになった場合には、労災保険法を強制適用することが適当
→ 強制適用にあたっては、運用面の課題について、対応を検討することが適当
●遺族(補償)等年金について
→ 夫と妻の支給要件の差は解消することが適当
→ 解消するにあたっては、夫にのみ課せられた支給要件を撤廃することが適当
→ 石綿健康被害救済法における特別遺族年金についても、夫と妻の支給要件の差を解消し、夫にのみ課せられた支給要件を撤廃することが適当
→ 給付期間については、現行の長期給付を維持することが適当
→ 特別加算を廃止し、遺族の数に応じた給付水準にするという考え方から、遺族1人の場合における給付基礎日額を175日分とすることが適当
●消滅時効について
→ 療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付等、消滅時効期間が2年である給付について、発症後の迅速な保険給付請求が困難な場合があると考えられる疾病を原因として請求する場合には、消滅時効期間を5年に延長することとし、まずは、脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病等について、対象とすることが適当
→ 労働基準法の災害補償請求権についても、労災保険給付請求権と同様に、消滅時効期間を延長することが適当
→ 労災保険制度の不知や手続の失念等により時効期間を徒過して請求された事案も存在することから、周知を工夫することや運用を改善することが適当
●社会復帰促進等事業について
→ 社会復帰促進等事業として実施されている給付について、特別支給金も含めて処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とすることが適当
→ 労働者等に対する給付的な社会復帰促進等事業に対する不服申立てについては、労働保険審査官および労働保険審査会法の対象とすることが適当
●遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額について
→ 別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合における給付基礎日額の算定にあたっては、疾病の発症時の賃金(以下、「発症時賃金」という)が、疾病発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日以前3カ月間の賃金(以下、「ばく露時賃金」という)を基礎として現行の取扱いに則り算定した平均賃金より高くなる場合は、発症時賃金を用いることが適当
→ 有害業務に従事した事業場を退職した後、就業していない期間に発症した場合における給付基礎日額の算定にあたっては、現行の取扱いを維持しつつ、引き続き検討を行うことが適当
【徴収関係】
●メリット制について
→ メリット制を存続させ適切に運用することが適当であるが、継続的にその効果等の検証を行うことが適当
→ 有害業務に従事した最終の事業場を退職した後、別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合における給付基礎日額の算定について、発症時賃金を用いるにあたっては、ばく露時賃金をもとに算定した保険給付額に相当する額に限り、疾病の発症原因となった有害業務への従事が行われた最終事業場のメリット収支率に反映させることが適当
→ メリット制が、労災かくしおよび労災保険給付を受給した労働者等に対する事業主による報復行為や不利益取扱いに繋がるといった懸念について、実態を把握し、必要な検討を行うことが適当
●労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題について
→ 労災保険給付の支給決定(不支給決定)の事実を、同一事故に対する給付種別ごとの初回の支給決定(不支給決定)に限り、年度更新手続を電子申請で行っている事業主に情報提供することが適当
→ 提供する情報は、支給決定金額、算定基礎、減額理由等を除いた項目(支給(不支給)決定の有無、処分決定年月日、処分者名、処分名(=給付種別))および被災労働者名とすることが適当
→ これらの情報は、原則として、当該災害に係る災害防止措置を講ずべきと考えられる事業主に対してのみ提供することが適当
→ メリット制の適用を受け、年度更新手続を電子申請で行っている事業主に対して、メリット収支率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報を提供することが適当
→ その際、提供する情報は、当該事業場のメリット収支率に反映された保険給付に係る当該メリット算入期間における保険給付、特別支給金および特別遺族給付金の合計金額とすることが適当
→ 事業主に対する支給決定に関する情報の提供の在り方について、必要な検討を行うことが適当
詳細は、下記リンク先にてご確認ください。