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欧州付加価値税の論点
概要
仕入税額控除、複数税率、インボイス、リバースチャージ……。
日本の消費税制度の先行モデルである欧州付加価値税は、どのように構築されたのか?
EU及び加盟各国の取組みや付加価値税指令の制定経緯、欧州司法裁判所の裁判例から、その要諦を探る。
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[著者略歴]
1959年東京生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法学研究科後期博士課程単位取得退学。
跡見学園女子大学文学部専任講師、東海大学法学部教授を経て、現在、明治学院大学経済学部教授。
2005年から2006年までハンブルク財政裁判所およびハンブルク国際租税研究所訪問研究員。
[目次]
第1章 欧州付加価値税の基礎―制度と沿革
Ⅰ 付加価値税共通ルールの策定と域内共有
1 付加価値税指令
2 欧州司法裁判所の役割
3 現行付加価値税指令の沿革
4 現行付加価値税制度の課題
Ⅱ 欧州付加価値税の基本原則
1 EUの一般原則と付加価値税の基本原則
2 中立原則
3 仕向地原則
4 法の濫用禁止原則
5 小 括
第2章 課税対象と納税義務者―付加価値税における「事業」
Ⅰ 「事業者」と「経済活動」
1 課税対象と納税義務者に関する指令内容
2 「経済活動を独立して行う」の意味
3 「対価」の意味
4 活動の反復継続性
5 事業者概念の拡張
6 違法取引
7 小 括
Ⅱ 課税取引
1 「物品の提供」と「サービスの提供」
2 「処分権の移転」の意味
3 特殊な取引
4 小 括
Ⅲ 中小事業者
1 中小事業者への配慮
2 小規模事業者
3 中規模事業者
4 小 括
第3章 仕入税額控除
Ⅰ 請求権としての仕入税額控除
1 完全かつ即時の控除
2 法廷闘争による仕入税額控除権の獲得
3 仕入税額控除の重要性
4 仕入れと売上げの関係
5 仕入税額の按分
6 仕入税額の事後調整
7 小 括
Ⅱ 仕入税額控除と非課税取引
1 非課税制度のジレンマ
2 非課税による仕入税額控除遮断の対応
3 小 括
Ⅲ 仕入税額控除とインボイス
1 仕入税額控除の入場券としてのインボイス
2 インボイスの必須記載項目
3 簡易インボイス
4 付加価値税番号の意義と機能
第4章 越境取引
Ⅰ 越境取引の基本ルール
1 越境取引の現状
2 物品取引
3 サービス取引
Ⅱ 越境取引における仕向地原則
1 仕向地原則と原産地原則
2 税務代理人
Ⅲ 域内越境取引における特徴的な制度
1 固定的施設(FE)
2 リバースチャージ制度
3 三角取引課税
Ⅳ 越境取引課税の課題
第5章 個別問題
Ⅰ 税率構造
1 付加価値税率の現状
2 軽減税率導入の理由と問題点
3 軽減税率適用をめぐる具体的事例と裁判例
4 軽減税率をめぐる論点の整理
5 複数税率構造の下での制度のあり方
Ⅱ 脱税問題
1 脱税の現状
2 VATギャップへの対応
3 脱税スキーム
4 付加価値税の脱税をめぐるEUと各加盟国の関係
5 脱税への対策
Ⅲ コンプライアンスコスト
1 コンプライアンスコストに注目する背景
2 コンプライアンスコストの範囲
3 1970年代から2010年代までのコンプライアンスコスト研究
4 「欧州委員会報告書」(2022年)
5 コンプライアンスコストを高める要因と対応